あれは そう 幼い頃
かなしいときは ここに来て
いつもうたを 唄っていた
ざわめく木の葉が 手招き
ゆらゆら ららら
ゆらゆら ららら
もう 泣かないで と
わたしに呼びかける
重なり合う 木々のすきまから
漏れてくるよ やさしいひかり
ここで暮らす すべてのものたちが
照らされて
足もとの花も 笑った
けれど もう 時は流れ
おとなになった わたしには
聴こえない山の声
傷つく木の葉が お別れ
さよなら ららら
さよなら ららら
どうか 行かないで と
風に呼びかけた
倒れてゆく 木々の心が
叫んでいる 大地の痛み
ここで生きる すべてのものたちに
どうか ひかりを
枯れてゆく花が 唄った
倒れている 木々の亡骸が
示している 明日への道しるべ
ここで生まれた すべての過ちに
どうか ひかりを――
それが
緑の遺言
作詞:やなせなな
アルバム『願い』(2009年)収録
©Studio Tabby